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 射撃命令を出したら――俺にとっての第四次世界大戦の開幕だ。畜生め、なんでこんな所に俺はいるのだ。一体全体、どういう訳で戦争は始まったのか? 誰にこの責任があるのだ。そして、この世界は、どうしてこうなってしまったんだ? 生き残る事が出来たら、なんとしてもそのすべてを調べあげよう。そして世界をこんな場所に変えた奴等を一人残らずブン殴ってやる。絶対に!(プロローグより)

 『征途』を執筆した佐藤大輔、その代表作のひとつ。1985年に発売されたボードゲームシミュレーションに同一タイトルの作品があり、その制作に関わった筆者が大幅な設定変更を経て世に送り出したのが本書である。
 1905年5月、日本軍は対馬沖でロシアのバルチック艦隊を相手に完勝し、日露戦争をなんとか判定勝ちに持ち込もうとしていた。しかし翌月からロシア軍は陸上にて反攻作戦を開始し、予備兵力が払底していた日本陸軍は大損害を被ってしまう。満州軍を指揮する児玉大将は全軍に後退を命じ、最終的に日本は旅順・大連を除いた中国本土における勢力圏を放棄。英国の介入によりロシアの進出は免れたものの、朝鮮半島からすら締め出されたことで大陸における利権の一切を喪失した。この結果、日本はその経済発展を植民地ではなく交易によって獲得せざるを得なくなり、必然的に外交製作も諸外国との協調――特に日英同盟を結んでいたイギリスとの関係強化を基本的な方針と定めるようになっていく。