補足
さて、組み立ての順序は以上で終わりですが、少しだけ追加説明が必要かなと思う物を纏めておきます。
実装艦娘とプラモのラインナップについて
詳細
1/700スケールは今や国際的な標準スケールに近いものとなり、日本艦や著名な外国艦は大部分が国内外のメーカーによってキット化されています。艦娘として実装されている艦も大半は比較的容易に1/700のプラスチックキットを入手可能ですが、ラインナップから漏れているものもあります。
同型艦のキットがある場合(例:長良、親潮など)は資料を参照して違いを確認し、一部を改造したり、そのまま代用することになります。
海外メーカーの古いキットしかない艦艇は入手性に難があったり、スケール、組みやすさ、精度などで不自由な面が出る場合もあります。
また、プラスチックキット化されてない艦(例:リベッチオ、コマンダン・テストなど)もあり、こういった艦の模型を作るにはより難易度の高いレジンキットに手を伸ばすことになったり、それも入手できなければ一からパーツを削り出す(フルスクラッチ)必要が出たりします。
「モチベーションに合わせて好きな艦娘を基準に選ぶ」と「技量に合わせて難易度を基準に選ぶ」の線引きはなかなか難しいものですので、不安であれば経験者に尋ねてみるのも有効な手段です。
『シズモ・リニューアルパーツについて』
詳細
メーカーの項目でも少々触れてはいますが、ウォーターラインシリーズは製品によって、高角砲や魚雷発射管、電探や探照灯、艦載機といった装備品だけを集めて並べたランナーが1~2枚、付属していることがあります(キットとは別に、簡単な説明書と共に梱包されているので、すぐ分かると思います)。
これは1995年頃に開発された、ウォーターライン各社の艦船装備品(機銃、魚雷発射管、高角砲、射撃指揮装置、艦載機、艦載艇など)を共通化させるためのリニューアルパーツで、「大型艦兵装セット」あるいは「小型艦兵装セット」という名前で別売りもされています。その設計上、個々の艦艇には不要となる部品が多く含まれています。
リニューアルパーツ開発後の製品は、このリニューアルパーツを使うという前提の元で設計され、説明書が書かれていますが、それ以前の製品の説明書ではリニューアルパーツの使用方法まで言及していませんので、初心者の方は少々悩まれると思います。
ですが、このリニューアルパーツに関しましては、皆さんの分かる範囲で、適宜キットの部品と入れ替えて利用して頂ければ問題ありません。
また余った部品を保管しておけば、このパーツが付属しない古いキットや、他社製キットにも使用できます。
『サーフェイサーについて』
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近年、特にガンプラなどのキャラクターモデルを扱う雑誌において、塗装前にサーフェイサーを吹くという記述が見られます。
そんな事情からか「サーフェイサーを吹いた方が良いですか?」という質問が多いので、少しだけ纏めておきます。
サーフェイサーとは
塗装する面の細かい傷などを埋め、より平滑な塗装面を得るために施す下地塗装です。
非常に細かいながらも、パテ同様に傷を埋める効果があります。
反面、艦船模型など小さなスケールでは、その繊細なディテールすらも埋めてしまうという危険性があります。
艦船模型では改造した部分の表面処理や、船体外板の継ぎ目などを表現するために、部分的に利用することがあります。
以上の事から、艦船模型ではサーフェイサーを模型全体に吹くのは基本的にオススメしません。
サーフェイサーの特徴を理解して、その上で利用するならば別に良いのですが、1/700や1/350という、他分野のスケールに比べて小さいスケールでは、ディテールが埋まってしまうと言うデメリットの方が大きいからです。
なお模型雑誌では、部品の透け処理や塗装面の状態を確認するためにサーフェイサーを・・・なんて記述もあったりしますが、透け対策や表面の状態の確認だけなら、濃いめのグレーで十分です。
つまりは、最終的にはグレーで船体を塗る軍艦の模型においては、特にその必要性が感じられない行程と言えます。
ただし1/350などで船体の鋼板継ぎ目を、マスキングテープを利用してサーフェイサーを吹く事で出来る段差を再現する手法もあります。
最近のキットであればキット段階でモールドがなされている為やる機会も少ないですが、1/350重巡洋艦キットのバルジなどにはモールドがない場合が多い為に鋼板継ぎ目を再現したいのであれば覚えておくと良いかもしれません。
- エッチングパーツなどの金属部品などを使用した場合には、各自の判断で適宜使用すると良いと思います。
個人的には、金属部品にはより薄い塗膜を得られるプライマーの使用をオススメします。
『旧日本海軍工廠標準色について』
詳細
軍艦の船体に塗られたグレー、所謂「軍艦色」は、白75%+黒25%という比率が規定で定められていましたが、呉・佐世保・横須賀・舞鶴の各海軍工廠で、使われた顔料や材料等の違いで微妙に差があったようです。
各工廠の色合いは、佐世保・横須賀・呉・舞鶴の順で明るくなっていきました。(もっとも規定の色に近かったのが横須賀と言われています)。
こうして各工廠で塗られる艦艇ですが、実際には各艦艇は陽射し、風、海水、戦闘など過酷な環境に晒され変色していきますし、また修理や塗粧直しで定係港(母港)にある軍艦色を使用したりしますので、そこまで神経質になる必要も無いかも知れません。
実際、出撃前には可燃性の塗料は陸揚げされ、他の艦の塗料と纏めて保管されたようです。
「軍艦色」でウェブ検索をすると、解説してくれているサイトがいくつもあります。作ろうとしている艦がどこの工廠で作られたかを意識にて塗り分けてみるのも面白いでしょう。
例えば、「暁」は一番暗い佐世保グレー、「響」は一番明るい舞鶴グレーとなります。
(だから艦娘2人の髪色が?)
またGSIクレオスからは「艦隊これくしょん 旧日本海軍工廠標準色セット」が発売中です。呉、佐世保、舞鶴の各工廠標準色と、リノリウム色がセットになったものです
(同社Mr.カラーと同じラッカー系塗料です。横須賀はミスターカラーC32軍艦色(2)を使います)。
『船体の塗り分けについて』
詳細
古いキットでは塗り分けの解説が不十分なこともあって、初心者の方は特に戸惑われる部分だと思いますので、簡単ではありますがまとめておきたいかと思います。
ただし、全てを解説するのはとても不可能ですので、分からないところは各種資料などで確認してください。
他人様の作品を真似するのもアリですよ(笑)。
『外舷色』
喫水線(浮かんでいる船の水面のライン)から上の色。
船体や、艦橋・煙突・兵装などの上部構造物は基本的に■グレー系の軍艦色■(上記『旧日本海軍工廠標準色について』も参照のこと)で塗られています。
大戦末期の空母や一部艦艇では、緑の濃淡の迷彩で塗られることがあったようですが、なにぶん資料が少なく、塗り分けパターンがよく分かっていない艦も多いようです。
『艦底色』
喫水線から下、基本的に水に浸かりっぱなしになる部分に塗る色です。
色合いは■赤みがかった茶褐色(ハルレッド)■で、現在の艦船の鮮やかな赤に比べると、幾分渋めの色です。
1/700ウォーターラインモデルでは船体の下部、約1mm程度をこの色で塗ることになります。
もちろんフルハルモデルであれば、喫水線より下はスクリューを除き、舵も含めてほぼ全てこの色になります。
『煙突頂部』
日本海軍では、煙突の頂部を■黒色■で塗り分けていました。
これは煙突から出るススの汚れを目立たなくする目的で、排煙の影響を受ける後部マストも、煙突の塗り分け線の高さから上、そして煙突の上端から9mまでの範囲が黒色でした。
以下は塗り分けの規定です。
1,煙突が円筒状のときは、直径の1/3を黒色塗装範囲とする。
2,煙突頂部の平面形が楕円や玉子形のときは、長径と短径の平均の1/3を黒色塗装範囲とする。
そして、周囲に付着する管類も同じ高さで黒色塗装する。
(軍艦メカニズム図鑑、日本の巡洋艦 P164より抜粋)
なお一部の艦(最上型、利根型など)ではこの規定に合致しない物もあり、最終的には資料写真などを元に各自で判断してください。
ちなみに自然界においては、太陽や空などの「環境光」の影響などから、完全に真っ黒な色は存在しません。模型で普通の黒色(ブラック)で塗ってしまうと不自然なうえに、外舷色(特にグレー系の軍艦色)と調和せずに色が悪目立ちしてしまいます。
そのため、■黒に近い灰色(ダークグレー)■で塗るのがよいでしょう。具体的に言えば、クレオスのMr.カラー「C40 ジャーマングレー」や「C137 タイヤブラック」、タミヤの「ラバーブラック」、ガイアカラーの「ニュートラルグレーV」などが該当するでしょう。
また、ダークグレーで塗ると、黒色の専用塗料でスミ入れする時に立体感が出やすくなります。
『甲板』
甲板の色は、大きく分けて三種類あります。
甲板表面の施工の違いで、塗る色が変わります。
1,鉄甲板
金属むき出しのままで作られた甲板で、そのままでは非常に滑りやすいため、多くの部分は滑り止めが施されています。
主に■外舷色■で塗装されます。
また甲板上の洗い場や一部空母の航空甲板などでコンクリート舗装が施されている艦もあり、この場合実艦は外舷色が上塗りされます。
模型映えや施工違いの表現を優先して明るめのグレーで塗る人も居ます。
2,リノリウム張り甲板
防音と遮熱そして滑り止めを兼ねてリノリウムという樹脂素材を表面に張った甲板です。
日本海軍の甲板に使われた■リノリウムの色は淡褐色(レッドブラウン)■で、約1m83cmごとに真鍮のリノリウム押さえにて留められていました。
日々の手入れによって、次第に黒ずんでいくようです。
主に巡洋艦・駆逐艦の上甲板や、戦艦などでも艦橋の露天甲板や航空作業甲板などに張られていたようです。
特にウォーターラインシリーズの古い駆逐艦や巡洋艦のキット(タミヤの吹雪型や夕張など)でこの部分の塗装指示がされてない物が多いです。
また、大戦後期には防火の点から、このリノリウムを剥がしていた艦もあったようです。
3,木甲板
木材を甲板に張った物です。
日本海軍では戦艦や空母の甲板に、チークやオーク、ヒノキが張られました。
新造時や張り替えてすぐの時は■生木の色(デッキタン)■ですが、年月を重ねると次第に風化して茶色味を帯びたグレーへと変色していき、さらに年月が経つと段々退色して白っぽく色が抜けていきます。
模型では模型映えを優先してデッキタンで塗られることが多いです。
また、一部の船では夜戦を考慮して黒で塗られた時期もあったようですが、この場合は模型の甲板を黒の塗料で塗ると実感を損ねやすいので、濃いグレーで塗ると良いでしょう。
おそらくリアルさを追求すると色味の加減や塗装の表現が一番難しい部分ですので、慣れないうちはあまり深く考えずにメーカー指定の色で塗っておくのが無難でしょう。
『機銃』
機銃本体・銃身・弾倉はつや消しの黒で塗られました。
メーカーの指定ではガンメタリックの指定が多いですが、模型的には濃いグレー(ジャーマングレー)などのほうがクドくならなくて良い感じに仕上がります。
なお銃身については、弾を発射する熱によって塗装が剥離するため、最初から塗装されておらず、鉄が剥き出しになっていました。
これを再現したい場合、GSIクレオスから「焼鉄色」という絶妙な色が発売されていますので、使ってみるのもよいでしょう。
『防水布・キャンバス・天幕』
主砲塔の砲身基部やキャンバスで覆われた手すり、また停泊時に張られた天幕は白色です。
模型では白をそのまま使わずに、少しグレーがかった白や、茶色味を帯びた白で塗ると全体のバランスがよくなります。
『スクリュー・スクリューシャフト』
フルハルモデル限定の話ですが、スクリュー 及びスクリューシャフトも色を塗らねばなりません。
当時はスクリューの材質は銅合金、スクリューシャフトの材質は鋼であったようです。
ですので、スクリューは金色、スクリューシャフトは銀で塗るのが一般的だと思われます。
ただし、スクリューシャフトにおいては電蝕や貝等の付着を防ぐために艦底色を塗ったという資料もあり、
その場合はスクリューのみを金色にしておくと良いでしょう。
余談ですが、海自の護衛艦のスクリューシャフトは艦底色で塗られています。